らめらたんのランドセル

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No.3 : 熊猫のワルツ

 「みんな違ってみんないい」。そんな言葉が世の中には存在する。しかし、それが許されるほど世界は甘くない。

 

 My name is 地図田刈美. 送り仮名が無いと読めない方も居るだろう。読み方は「ちずた かるび」である。かの有名な某韓国料理名に酷似している。その為、友人からは「ケバブ」と呼ばれている。そんな私は超が付くほどの変わり者。

 

 カーテン越しに光が差し込んできた。どうやら朝が来たようだ。布団の中で平泳ぎしているとアラーム音が私1人しか居ない部屋で鳴り響いた。朝6時。起きなければならない時間だが、明け方4時頃に飼い猫の「イッヌ」が布団内に乱入するトラブルがあった為、アディショナルタイム5分が設けられた。私は寝付く迄に4分59秒を要する。つまり仮にこれから眠りにつくことを試みたとしても1秒で目覚ましが鳴ることになる。それでは効率が悪すぎると思い、私はアディショナルタイムを棄却し布団を後にした。真っ先に洗面所へ向かいクイックルワイパーで洗顔した。やはりこれが朝のメインイベントだ。だが時々クイックルワイパーを切らしていることがある。そう言った時には有能な控えであるコロコロを使ってフェイスを清潔にする。これが私の朝まずすること。今日も洗顔を終え朝食の準備にかかる。今日のメニューは枕カバーの刺身。昨日買ったばかりの新鮮な枕カバーをリッチに刺身にして食す。醤油ではなく、ポン酢が合う。これは通じゃなければ分からない情報だろう。柑橘系の爽やかさと枕カバーの噛み心地が絶妙なコントラストを形成する。また、腹持ちもそれなりに評価できるので昼過ぎまでは空腹の状態には陥らない。以前108円の枕カバーを刺身にして露店を出したことがある。その時は1切れ300円にしたのだが爆売れした。1つの枕カバーからは大体12切れ作ることが出来る。そんな中、600切れも売れたのである。つまり枕カバー50個分。値段にすると5,400円分。しかし1切れ300円で売っていたので売上は18万円。凄い商売をしたものだ。17万4,600円もの利益を獲得した。そんな絶品の朝食を食べ終え、仕事へ向かうのだ。

 私は1日に笹の葉を100枚食べる仕事をしている。基本は9時から17時までの勤務だが、17時になっても80枚しか食べてない等、ノルマに乗っていなかった場合は食べ終えるまで残業になる。しかしそれはあくまでも自分が食べなかったのが悪いので特に残業代は発生しない。逆に17時以前に100枚食べ終えていた場合は早上がりも可能である。また、もっと食べることが出来る場合はさらに枚数を重ねていき、それがその月のインセンティブとなっていく仕組みだ。昨日は昼に激盛り3kgハンバーグを食べたおかげで17時の時点で63枚しか食べ終えておらず、会社を出たのは25時だった。ブラック企業にも程がある。昼食は基本的に社内食堂を利用する決まりになっている。だが社内食堂のメニューは激盛り3kgハンバーグと大盛り2kgペペロンチーノしかない。その為少食な社員は毎日24時頃まで残業をする羽目になっている。杜撰な管理体制とかそういう次元ではない。社内の環境がそうさせている。昼にそれほどの莫大な量を食べさせておいて、1日に100枚の笹を食わなければならないのは到底理解出来ない。入社13年目の先輩社員は午前に100枚片付けるという荒業を習得したという。だが、これも高難度。まず午前のうちに100枚食べることが困難である。それ以上に厳しいのは昼食のお残しが厳禁であること。つまり、「午前に笹食いすぎて草、昼飯残すわ。すまんのぉ。」は通用しないのだ。彼の場合は午前に全て食べた上で昼にも激盛りのハンバーグを食べ、インセンティブを獲得することなくそのまま退社する。平均退社時刻は14:30。羨ましいが私も10年目くらいにならないと出来ないだろう。そんなこんなで午前に73枚食べ終えた私は食堂に向かう。ペペロンチーノは2kgとは言え、かなり重いので今日も今日とてハンバーグを選択。これをものの15分で食べ終え、再びデスクへ向かった。残されたノルマは27枚。9枚重ねて3回に分けて食べることにした。そうすると案外早く片付き、今日の退社時刻は15:28だった。

 帰宅途中、小腹が空いてきたので道に生えていた笹を食した。勤務時間外であるにも関わらず笹を食べるなんて出来すぎた男だ。しかし勤務地で食べるそれよりも格段に美味しくはなかった。

 家に着くと洗顔料で床を磨き、その後クイックルワイパーで自分の顔面を綺麗にした。今日の夕飯はレトルトの笹カレー。ルーは緑色をしており、決して食欲が湧くようなものではない。湯煎ですぐに完成。これも魅力のひとつだ。ササッと食べ終えてサイダー風呂に入り就寝。今日も一日を無事終えることが出来た。それでは皆さん、ぽやしみなさい。